MPS(Microphysiological Systems)とは? ~東京応化工業が注目する、生体模倣システムの基礎と可能性~

- はじめに
- MPSとは?(東京応化工業が注目する理由)
-
基本用語(MPSを理解するための最初のステップ)
- なぜ世界中の企業が MPS に注目しているのか
- MPSチップの構造(東京応化工業が得意とする領域)
- MPSの用途(どんな企業が導入検討しているのか?)
- MPSが求められる背景(社会的・産業的要因)
- まとめ(MPSが企業にもたらす価値)
- Fluid3D-X(フルード スリーディー クロス)のご紹介
はじめに
創薬・安全性評価・化学物質試験など、過去数十年にわたり動物実験が中心だった領域で、**MPS(Microphysiological Systems:生体模倣システム)**が新しい選択肢として注目されています。
東京応化工業は、半導体分野で磨いてきた微細加工技術・材料技術を強みに、生体模倣システム(MPS)領域を次世代の重要テーマとして注視しています。
本コラムは、その背景と理由を踏まえ、初心者でも理解できるように “分かりやすく、深く” MPSを解説します。
特に、
- なぜ世界がMPSに注目しているのか
- どこに価値があるのか
- MPSが創薬や安全性評価をどう変えるのか
- 東京応化工業がどのように貢献できるのか
といった“他社では語られにくい視点”を加えることで、TOKならではのコラムとしてお届けします。
MPSとは?(東京応化工業が注目する理由)
臓器チップ(Organ-on-a-Chip)/MPSは、マイクロ流体(微小流路)を用いて細胞の周辺環境を制御し、せん断応力や灌流、濃度勾配など“体内らしい刺激”を与えることで、静置培養では再現しにくい臓器の微小環境をin vitroで扱うための考え方です。
2010年代以降の研究の進展を背景に、近年は臓器チップを含む評価系がMPSとして総称され、用途に応じて多様なフォーマットが検討されています。
東京応化工業としては、微小流路の構造づくりや表面・材料の制御といった要素が、当社の強みと親和性が高い点に着目しています。
📘《図①:MPSとは何か(概念)》

MPS(Microphysiological Systems)とは、
“ヒトの臓器に近い環境を、体外の小型デバイス上で再現する技術”。
従来の細胞を用いた試験よりも生理学的に自然な反応が得られ、動物試験ではできなかった評価ができる可能性があります。
東京応化工業が注目する理由は、この「微小流路」や「細胞の周辺環境制御」こそ、当社の微細加工技術と極めて親和性が高い領域だからです。
基本用語(MPSを理解するための最初のステップ)
- in vitro
人工的な環境下で行われる細胞や組織の実験・研究(従来では試験管、シャーレなど)。
- 灌流培養
培地(栄養や酸素)を流しながら培養するシステム。細胞に対しシェアストレスの負荷など、従来のシャーレ等の培養とは違った刺激を与えられる。
- Organ-on-a-Chip(臓器チップ)
微小流路を活用して臓器の働きを再現するMPSデバイスの代表形式。
- 3D細胞培養・オルガノイド
立体的な細胞構造を再現する技術。TOKの材料技術との親和性が高い分野。
- FDA(米国食品医薬品局)
米国の政府機関で、食品などさまざまな製品の安全性や有効性を証明し、国民の健康を守る役割を担っている。
→ 今後の市場成長を左右する重要機関。
こうした基礎用語を理解すると、MPS領域の全体像がクリアになります。
なぜ世界中の企業が MPS に注目しているのか
欧米では2010年代前半から国家主導の研究開発が進み、近年は「実用化・社会実装」を意識した議論が加速しています。
また、MPSやAIを含む新規評価手法(NAMs)が、非臨床試験の選択肢を広げる枠組みとして注目されています。
象徴的な動きとして、米国では2022年に動物実験義務の見直しが行われ、MPS等で得られるデータを科学的根拠の一部として活用する議論・事例報告が進んでいます。
東京応化工業では、制度動向そのものよりも、評価の早い段階で“判断材料の質”を上げられるかという観点でMPSを位置付けています。
📘《図②:従来法 vs MPS(比較図)》

- 理由①:動物試験の限界(種差)
動物とヒトでは薬物の反応が一致しないケースが多く、製品化の失敗要因になることもしばしば。
MPSはヒト由来の細胞を灌流培養で評価できるため、今まで動物では評価できなかったデータの取得が期待でき、薬開発の予測精度向上が期待されます。
- ②:世界的な動物実験削減(規制・倫理)
EUや米国では化粧品や医薬品分野で動物試験の制限が強化されています。
→ MPSは動物実験を減らしつつ、動物ではできない評価として国際的に注目。
- 理由③:創薬スピードと効率化
予測精度が向上するため、臨床試験での失敗が減り、創薬スピードアップの期待がされます。
創薬の前臨床段階でMPSを組み込む企業は急増しています。
MPSチップの構造(東京応化工業が得意とする領域)
📘《図③:MPSチップの断面構造図》

MPSチップは、
- マイクロ流路構造
- 多孔膜(メンブレン)
- 細胞
によって臓器固有の機能を再現します。
ここにこそ、東京応化工業の強み ―フォトレジスト技術 × 微細加工 × 高純度化学品が生かされます。
当社は半導体分野で培った技術を、MPSの構造形成材料・表面改質・コーティングへ応用できる可能性を強く感じており、この領域の研究動向に継続的な関心を寄せています。
MPSの用途(どんな企業が導入検討しているのか?)
📘《図④:MPS用途マップ》

MPSは以下の用途で導入が進んでいます:
- 創薬初期の薬効評価
- 安全性・毒性試験
- 化学物質・化粧品の代替試験
- 疾患モデル研究
- 個別化医療(患者細胞での評価)
- ADME(薬物動態)研究
これらは全て「ヒトに近い環境で評価したい」というニーズから生まれています。
MPSが求められる背景(社会的・産業的要因)
MPSは万能な代替法というより、各臓器の「特定の機能」や「評価したい一側面」を高い解像度で捉えるための評価基盤です。そのため、目的に応じて適切なモデルやフォーマットを選び、既存のin vitro/in vivo評価系と役割分担しながら使い分けることが前提になります。
社会実装を進める上では、標準化や規制受容(レギュラトリーサイエンス)の観点も重要であり、産学官での整備が進められています。
東京応化工業としても、過度な期待を煽らず、ユーザーの評価設計に資する情報を段階的に提供する——というスタンスで本コラムを位置付けています。
📘《図⑤:MPS普及の背景インフォグラフィック》

MPSは技術トレンドではなく、
産業構造自体の変化が後押ししている“本質的なニーズ”に基づく技術です。
- 動物実験規制の強化(EU / US)
- 倫理性・透明性の重視
- コスト・供給問題(特にカニクイザルなどの霊長類)
- 科学技術の高度化(3D培養・微小流体など)
東京応化工業としても、この潮流を重要な技術転換点と捉え、
MPS関連の技術動向を継続的にウォッチし、研究開発の方向性検討に活かしています。
まとめ(MPSが企業にもたらす価値)
MPSは:
- ヒトに近い反応を体外で再現し、
- 動物実験の課題を補完し、
- 創薬・化学品評価の精度とスピードを向上させる
次世代の重要な技術です。
東京応化工業は、これまで培ってきた
微細加工技術・高純度化技術を強みに、
MPS領域における研究・技術開発に積極的な関心を寄せています。
📎 Fluid3D‑X(フルード スリーディー クロス)のご紹介
東京応化工業では、MPS活用を検討する研究者の皆様に向けて
Fluid3D‑X(フルード スリーディー クロス) を提供しています。
📘《図⑥:Fluid3D‑X 製品紹介図》

- 微小流路による 生体類似の流れ
- 3D細胞培養に最適な空間設計
- 長期培養でも細胞機能を維持しやすい構造
- 創薬・毒性評価・疾患モデルなど幅広く応用可能
半導体由来の微細加工技術 × 化学材料技術 を掛け合わせた、東京応化工業らしいMPSプラットフォームです。
◉Fluid3D‑X 製品ページ および 製品動画
👉 生体模倣システム
研究目的に応じた最適構成のご提案も可能です。
ぜひお気軽にお問い合わせください。

